トンボの湯と水力自家発電
2009年08月10日
トンボの湯と水力自家発電
星野エリアのエコモダンな温泉街の中心にあるトンボの湯は星野温泉を源泉とする日帰り温浴施設ですが、実はその隣にひっそりと自家発電の水力発電所があります。

今回はこの水力発電所についてご紹介したいと思います。星野リゾートの前進は軽井沢で最初の温泉旅館である「星野温泉旅館」なのですが、開業当初は電気が通じていないことから所謂”ランプの宿”状態でした。昔の方に話を聞くと、ホヤ掃除が大変だったようです。しかし、開業後数年ほど経った頃、沓掛村(当時の中軽井沢)には長野電灯会社から漸く送電が始まった時代となります。いよいよこの地域にも電気がやって来るという状況だったようです。しかし、長野電灯会社に掛け合って送電をお願いしたものの、集落から距離が離れていることを理由に送電してもらえなかったそうです。
当時の星野温泉の人達はそこで諦めずに専門家とも相談して、何とか”電気”という新しいエネルギーを使えないかと考えたようです。当時東京の浅草・神谷バーでは”電気ブラン”が大流行し、電気=モダンという大正時代の流れのなかで当時のモダンなエネルギー獲得に挑んだわけです。
そこで浮かんできたアイディアが湯川の流れを利用した”水力発電”でした。早速当時の逓信省と掛け合って認可を受け、ドイツの会社から直流100ボルト・10キロワットの発電機を買い求めたそうです。これが星野温泉の水力発電所の始まりです。それにしても、国と掛け合って認可をとって、外国から発電機を輸入してしまうその感覚に恐れ入ります。今の我々よりももっとグローバルな行動力があったと感嘆します。
その後、1927年(昭和2年)には本格的なタービン水車での発電を計画し、旅館の下に水路を通し、表の池を貯水池として取水・放水路を作ると共に本格的なタービン水車を設置して安定的な電力供給を行う仕組みを確立させたのです。
今日では電力のみならず、新しいエネルギー源として地熱を利用した旅館の暖房システムの導入や廃湯の熱エネルギーを熱交換機で「熱エネルギー」だけをとりだして、別の温水が必要なボイラーで再利用するなどの仕組みを取り入れています。こうした先人の取組から現代の先進的な仕組みの導入を続けてきたことで、自社のエネルギーの自給率は約75%迄引き上げることが出来ています。
私が星野リゾートに入った頃には、まだ昔の星野温泉旅館があり、時折、紅葉のシーズンにはタービンの水車に枯れ葉がつまって停電するという事もありました。今思えば、そんなトラブルも、どこか自然エネルギーを実感できる面白い体験だったという記憶があります。今ではバックアップシステムが整備され、季節感のある停電を体験することは出来ませんが、ゆっくり温泉につかりながら、隣にある水力発電所のことを考えると、なんとも面白き心持ちになってしまいます。
正面には、当時の職人達が水道管をあしらって「HOSHINO HYDORO POWER PLANT」書いた看板が堂々と掛かっています。これを作り上げて維持してきた人達の思いが今に伝わる看板です。
是非、次回トンボの湯で源泉に浸った後にでも、ちょっとこの水力発電所を眺めてみてください。
星野エリア総支配人
安藤 剛



















